こんにちは。今日の記事はこれ。
またもや、八重山古典民謡の歌詞のくどい研究だ。
日本一くどい研究と言っても良いだろう。
何でこのようなことをやっているかというと、私は琉球三線・八重山民謡をやっているので、それを深く知るため、というのが第一の直接的な理由である。
第2は、このような勉強を通じて、現代の英語教育の問題点も浮き彫りにすることができる。
現代の英語教育の問題点、何ていうものはたくさん挙げられる。
評論家はいっぱい挙げている。
しかし、自分自身の実践を通じて、そのようなものを考えたいのである。
故に、今、八重山の島言葉(八重山方言)を勉強する傍、そのようなことを考えている。これも私がこのことを心血を傾けて勉強している大きな理由である。
(平成29年7月19日 水曜日)
今日は、鳩間節の2番に行きます。
八重山民謡をやっている方にはお馴染みの歌詞ですが、この2番は、細かく見ていくと、けっこう課題の多い歌詞であったと思います。
蒲葵(くば)とは・・・ビロウ(Livistona chinensis、蒲葵、枇榔、檳榔)はヤシ科の常緑高木。漢名は蒲葵、別名ホキ(蒲葵の音)、クバ(沖縄)など。古名はアヂマサ。
鳩間節1番は、鳩間中岡に駆け上ったのです。30mくらいの岡だから走って登るのも造作ないでしょう。2番はこの鳩間中岡の頂上の蒲葵(くば)の美しさを歌ったものです。
課題の一つ目。「美しゃ」(かいしゃ)とは、何か、です。歌をやっている人ならば、「そんなの美しい、という意味に決まっているだろう」と一蹴するかもしれません。
八重山古典民謡の現在、中心的立場にあられる先生から、昨年、平成28年時のコンクールの際、「君は言葉がわからないだろう。だから歌がいけていないのだ」と言う厳しいご指摘を受けました。
今だから申し上げますが、私はいささか不満でした。歌の意味はわかっている訳ですから。本を読むとすぐにわかる。日本語と八重山島言葉は親戚関係の言語。似た言葉も多い。また、漢字・仮名混じり文で表記可能なので、漢字で書かれているとけっこう分かるものです。故に不満だった訳です。
しかし、私が島言葉が分からないのは現実です。このようなことが分からないのです。
「美しゃーん」「美しゃ」が「美しい」という意味があるのは分かっています。
しかし、それでは「美しかった」(過去)。「美しくない」(否定)。「美しければ」(仮定)「美しかれ」(命令)が分かるでしょうか。
それが私の課題と認識しました。
まず、課題の一つ目は、「かいしゃ」とは何か、ということです。
「かいしゃ」は、原形は「かいしゃーん」で、上記のように変化します。
私は形容詞や動詞の活用の変化を分かりやすくするために、これらを4つのパートに分類しました。
もっとも大事なのは「語幹」です。これは、変わりません(5類の動詞のみ変わるところがある)
変化部は、子音は同じですが、その中で母音が変わる部分を「変化部」としました。
つまり「あ行」「か行」「さ行_・・・「や行_「わ行」の中で変化する訳です。
学校の国語、古文で習った「あ行変格活用」とか「ラ行変格活用」と言っていたものです。
ちなみに「かいしゃーん」はラ行変格活用です。
あと、それに語尾、接続語尾が続く訳です。
接続語尾と言うのは、「事(くとぅ)「ぴとぅ(人)」とかがありますが、」このような単に単語を変えて繋がっていくもの。
語尾は、もっと密接に、語幹、変化部と関係するものと考えて分類していますが、ちょっとはっきりしないところがあります。しかし、ここをくどくやると文法学者になってしまいます。そこまでは考える必要はないと思ってやっています。話は続きます。次のスライドです。
スライドの通りです。石垣方言辞典(宮城信勇 著)によると・・・というか、ネイティブではない私は、このようなせ正書に頼って理論で追求していくしかありません故。
「かいしゃ」は、「かいしゃーん」の語幹なのです。
形容詞の語幹は、そのままで、
1)名詞として
2)副詞として
使われます。
この場合、
1)名詞として使えば、美しさが生い茂っている、となるし
2)副詞として使えば、美しく生い茂っている、となるわけです。
次の課題は、「むいだる」(萌いだる) です。ここに「萌え」を当てたのは、他には見ないですね。普通は「生いだる(むいだる)」としているのが多いです。
これは私の発案です。
なにが正しい、何が正しくない、と言うことはありませんが、「萌」を当てると、なかなか気分が出るでしょう。
2番目の課題はこの「萌いだる」とは何か、ということです。
正書によると「生えている」意訳して「生い茂っている」という感じです。そう思います。しかし、ここではこの文章をもっと細かく見て行きましょう。
この「萌いだる」は「萌い」と「たる」に分かれます。
「萌い」の原形は「むいるん」です。
その変化を示しました。
5類の動詞で、例外的に語幹が変化します。
「や行変格活用」ですが、変化部で「ー」という母音を伸ばす印が入っています。
「やいゆえよ」は「い」と「え」を含む特殊な活用です。しかし、本来は「ゐ」(い)。「ゑ」(え)であったわけです。
まあ、変化部で「ー」の所もあるということでここではお願いいたします。
さて、ここで「萌い(むい)」は連用形 と解釈します。
「だる」は何か、というのが難しかったですね。
石垣方言辞典でけっこう調べました。
「たるん」という後で出ていました。
石垣方言辞典の文法のところにも「接尾語」として出ていました。
動詞の連用形2に接続して、その動詞を強める働きをする、とありました。
日本語の古語でも「たり」というのがあり、これと似ているような気がします。
参考までに、古語の「たり」の解説
たり
助動詞タリ活用型
《接続》体言に付く。〔断定〕…である。…だ。
出典平家物語 一・鱸
「清盛(きよもり)、嫡男たるによって、その跡をつぐ」
[訳] 清盛は、正式の長男であることによって、その(死んだ父の)家督を継ぐ。
注意完了の助動詞「たり」や「漫漫たり」などのタリ活用形容動詞の語尾と混同しないようにすること。
参考格助詞「と」+ラ変動詞「あり」からなる「とあり」の変化した語。
語の歴史中古には漢文訓読の文章に用いられ、和文にはほとんど用いられなかったが、中世以降和漢混交文に用いられて一般化した。
たるん の活用です。
「たる」は連体形。名詞に接続します。故にこの場合、「岡ぬ蒲葵(むりぬくば)」の「岡」に接続しています。
つまり「むいだる」は「むい」という植物が生えている様を表す動詞に「たる」がついてこの動作が強められています。故に「生い茂る」という訳になると思います。
歌詞では「だる」と濁っていますが、語調の関係でしょう。すなわち「むいたる」よりも「むいだる」の方が言いやすい気がします。
この次の「連りたる」は「たる」ですね。濁っていません。
次の課題です。
この「連りたる」です。
これは、「むいだる」と同形です。
ゆぬむぬ です(同じもの です。「ゆぬ」とは、「同じ」という意味)
「連りん」の変化です。
中舌母音の表記法には2通りあり、つまり、この場合「ちぅりん」と「つぃりん」ですが、正書では「ちぅ」が多く採用されています。
大濱安判先生の書かれた工工四では「つぃ」が採用されています。
故に私も「つぃ」派なのですが、正書には多く「ちぅ」が出ていますので、ここでは、「ちぅ」を多く使っています。ただし、「つぃ」も各所に出てきます。努めて統一を計ってはおりません。
さて、このような表を見せられると、「ゲーッ」となる方も多いかと思いますが、落ち着いて考えられたら良い。この表のお陰で、過去形とか否定形、丁寧な言葉、などが一目で分かるではありませんか。そして、単語は違っても同様なリズムや語感がある。それを暗記せよ、とも言えませんが、見ていると、何となく分かるようになるような気がしませんか。
何もわからない、のと、何となく分かる(ような気がする)、というのは、かなり大きな違いと考えます。
さて、「つりたる」ですが、これも「むいだる」と同様、強調の接尾語に繋がっていきますので、「ちぅりん(つぃりん)」の連用形2「ちぅり(つぃり)」が使用されています。
「連りたる」の解析 まとめます。
スライドの通りです。
「つぃりん」は3A類の変化の動詞。これは辞典を見なくてはわかりません。
慣れてくると推測はつくようになります。
その連用形2が、「つぃり」
それが強意の接尾語の「たるん」の連体形「たる」に繋がっている。
連体形は名詞に繋がる。故に、次の「つぃづぃ」(頂上)に繋がってい行くのです。
これは①と同様です。
形容詞の変化と、語幹がそのまま使われた場合、名詞か副詞の意味を持ってきます。
さて、鳩間節2番の歌詞 今まで以上にはっきりとしてきましたでしょうか。
それでは、また。島仲浜より、さようなら。
もう一つの拙ブログ
八重山古典民謡の調べ
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